セゾン 堤清二が見た未来 (鈴木哲也)
現在の二大流通グループといえば、セブン&ホールディングズ、イオンだが、
しかし、ダイエーは名前すらも消えかけているが、
セゾングループはセゾン他社に買収されながらも、しぶとく生き残っている。
無印良品、ロフト、ファミリーマート、西武百貨店、西友、パルコ、……
ダイエーの手がけたものは消えつつあるが、
セゾングループの手がけたものは、残っているどころか、
大きく花開いているものもある。
先見性などの違いではないだろうか。
しかし、その先見性を持ちつつも、なぜ解体の憂き目にあったのか、
それを読み解いていくのが本書である。
堤清二の先見性とはこういったものだ。
「ものがあふれる時代になると、次は時間商品が重要」
(無印良品立ち上げの際)
「生活の要求の多様性、意義のある生活を送りたいという願望、生活の知恵を得たいという願い、そういう人びとの要求に応えるように売り場が作られ、商品が提供されているということ」
(1975年の社内報。これがロフトやリブロ、WAVEにつながっていく)
「店をつくるのはなく、街をつくれ」
(1985年、西武塚新店)
そして2011年には、著者にこう語っている。
「これから怖いのは、再編や寡占化が進んで産業界の多様性がなくなること。それと統制経済で自由が失われることだと思います」
堤清二と中内功の大きな違いは、先見性、ビジョンであったのではないかとも思われる。
そして、先見性を持ちながらもセゾングループが解体してしまったのは、次から次へとお金を貸しながら、バブルがはじけると、一斉に引き上げようとした銀行に優良企業から売られてしまったことが、最大の原因のように思える。
ただ、本書で扱われているのは、堤清二の表の顔に過ぎない。
本書には書かれていないが、セゾングループ内には伝説があって、堤清二に関わるとろくなことにならないと言われていて、あえて距離を置く人たちが多かったという。
そして、本書で扱われていない非上場の堤清二のトンネル会社の存在なども考慮すべきだろう。
ただ、それらを割り引いても、堤清二の先見性、今後の時代を生きるヒントが、この本に書いてある。