エドガルド・モルターナ誘拐事件

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エドガルド・モルターラ誘拐事件

カフカの「審判」とカミュの「異邦人」をまぜて、ちょっとヘビーになった不条理な物語だ。

ただ、カフカカミュも想像の物語だが、これは違う。
本当にあった話だ。
 
しかも1858年。
明治維新の10年前だから、ほぼ近代だ。
 
ユダヤ商人モルターラの6歳の息子エドガルドは、異端審問官に親の目の前で連れ去れる。
何かの間違いだろうと、いったんは息子を引き渡すが、なんだかんだと理由をつけて子供にはなかなか会えず、それどころか子供は教皇のもとに送られてしまう。
 
そもそもなぜ連れていかれたのかというと、ものすごく馬鹿げたこじつけなのだ。
モルターラは、あの手この手を使い、そしてユダヤ人ネットワークも使って、子供を取り戻そうとする。
あげくの果てにはナポレオンや英国議会まで引っ張り出す。
 
いったいこの少年はどうなるのか。
 
本はかなり重厚で、時にはストーリーと関係なく、延々と時代背景や出てくる重要人物の説明にさかれる。
それはそれで読み応えがあり、ひさびさに手応えのある読書になった。
 
誘拐事件はミステリーだが、その内容は不条理の世界だ。
イタリアの不条理作家ディーノ・ブザッティ(DINO BUZATTI)の「七階」、安部公房砂の女」を思い出した。
なんかちょっとずつ、行きたくない世界に引きずり込まれるが、時々ちょっと良くなるみたいな。
 
本書はスピルバークが映画化するらしい。
シンドラーのリスト」を超える作品になるのだろうか。